皮膚/耳skin

皮膚/耳

皮膚疾患や耳の疾患は転院が非常に多い病気です。診断がついていないために治らない、診断はついているけど治療がうまくいかない、など様々な理由があります。また、皮膚病は時に一生付き合っていかないといけない場合もあります。そのため、当院では飼い主様と相談をしながら、何よりも皮膚病の動物と飼い主様に不要な負担をかけないように治療を進めています。

よくある症状

  • 皮膚や耳を痒がる
  • 皮膚が赤い、黒い
  • 毛が抜ける、脱毛している
  • 皮膚がべとべとしている
  • 耳が赤い
  • 耳が臭い
  • 耳をこすり付けている

よくある皮膚疾患&耳疾患

膿皮症(細菌性皮膚炎)

細菌が原因となり発症する皮膚炎です。ブドウ球菌という皮膚常在菌が原因となります。皮膚の外傷や細菌以外の感染症、先天的な皮膚の構造や機能異常(アレルギーや脂漏症など)、精神的な要因(舐め癖)、スキンケア不足、栄養状態の不良、代謝異常、免疫力低下など様々な要因が関与します。皮膚のバリア機能が破綻し、細菌が異常に繁殖することで、皮膚炎としての症状を現します。

ワンちゃんの内股の皮膚にできた膿皮症(細菌性皮膚炎)です。皮膚が赤くなり黄色いかさぶたができています。

向かって右側の皮膚は少し黒ずんでいます(色素沈着)。これは以前にも炎症を起こしたことがある証拠です。膿皮症は再発することもある病気です。

特に皮膚がしわになる部分は蒸れたりこすれたりすることから皮膚炎が起きやすいので、よく見てあげるようにして下さい。

外耳炎

外耳炎は来院主訴の中でも最も多い病気の1つです。犬種や年齢関係なく、どのワンちゃんでも起こりえます。治療をしっかり行わないと、中耳や内耳といった耳の奥まで炎症が広がる可能性もあるので、早期治療がとても大事です。自宅やトリミングサロンで耳掃除をしている場合、その方法にも注意が必要です。必要以上に激しく洗うと外耳炎のきっかけになったり、治りを悪くすることがあります。ご不安な場合は当院では耳掃除だけの来院も受付けていますので、お気軽にご相談ください。

ワンちゃんには多い外耳炎ですが、猫ちゃんはあまり外耳炎になりません。猫ちゃんでいわゆる耳だれ(ウミまじりのくさい液)が出ているような外耳炎の場合、外耳道に腫瘍が見つかる場合もあります。猫ちゃんの外耳炎は少し重大なこともありますので、しっかりと検査をすることをお勧めします。

ワンちゃんの外耳炎です。耳の皮膚が全体的に分厚くなり、耳の穴が確認できなくなっています。急性の外耳炎の場合、ここまで皮膚に変化が出ることは少ないので、このワンちゃんは慢性的な外耳炎があると考えられます。

このような場合、外用薬自体が耳道に入りにくく耳の腫れ自体が治療の妨げになるため、ステロイドや抗生物質の内服を併用しながら治療を進めます。

アレルギー性皮膚疾患

アレルギー反応を引き起こす物質(アレルゲン)に対し、免疫反応が起こって、皮膚に痒みや赤みなどの症状を引き起こします。 アレルゲンには下記のような環境アレルゲン(カビ、花粉、虫など)や食物アレルゲンなどがあります代表的なアレルギー性皮膚疾患には、アトピー性皮膚炎や食物アレルギーなどがあります。

治療前
治療約40日後

ノミアレルギー性皮膚炎

寄生したノミが吸血するときに、体内に侵入した唾液に対してアレルギー反応を起こす皮膚病です。ノミの唾液に対してアレルギーを起こすので、ノミに咬まれたところが痒いのはもちろん、広範囲にかゆみや発疹ができてしまいます。皮膚のかゆみが激しく、ノミの駆除はもちろん、皮膚炎の治療も行います。

皮膚糸状菌症 

糸状菌という真菌(カビ)が原因で起きる皮膚病です。皮膚の赤みやフケ、かさぶたを伴う円形脱毛が主な症状です。抵抗力が弱い子犬や子猫、免疫力の低下している高齢犬・高齢猫・疾患のある犬猫がかかりやすい傾向にあります。他の動物や人にも感染する場合があるため、同居動物がいる場合は完治するまで隔離する、感染動物を触った後は手洗いをしっかりするなど、感染が広がらないように注意が必要です。

猫ちゃんの鼻の周りにかさぶた状の物と脱毛が見られます。毛を抜いて顕微鏡で検査をすると真菌(カビ)によって構造が変化した毛が見つかりました。

このカビですが、人の水虫と同じ仲間です。治療には最低でも1カ月以上の投薬が必要となります。再発予防のため、奇麗になってからさらに1カ月程度継続した投薬をお勧めしています。

クッシング症候群

副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが過剰に出ることで、体に悪影響を与えます。ワンちゃんでよくみられるホルモン異常の病気で、症状が進行すると免疫力が低下し、皮膚炎や膀胱炎、糖尿病などの病気を併発します。多飲多尿、毛が抜けて皮膚が黒ずむといった症状が見られます。

確定診断をするために

何よりも問診と身体検査

ほとんどの皮膚病は問診と身体検査でどんな皮膚病なのかが予測できます。そのかわり、これらを正しく行わないと、診断や治療が間違った方向に進んでしまうこともしばしばです。皮膚の状況やご自宅での過ごし方などを詳しくお知らせください。過去現在に投薬していた薬類、食事、シャンプーなどの名称、転院される方は他院様での検査結果などを可能であればご持参ください。診断・治療の参考とさせていただきます。

問診を基にした皮膚検査

問診を基にして、その子に応じた検査を実施していきます。

検査の種類分かること
セロテープ鏡検被毛に寄生する寄生虫(シラミ・ツメダニ・ヅツキダニなど)の検出
ノミとりくし検査ノミの糞・卵・虫体の検出
被毛鏡検真菌の検出 など
皮膚掻爬検査寄生虫(疥癬・ニキビダニ)の検出 など
皮膚スタンプ検査細菌・真菌の有無、細胞診 など
臨床組織病理学検査皮膚病の原因の特定
一般血液検査及び内分泌検査皮膚病の原因の特定
皮内反応検査と血清中特異的IgE検査アトピー性皮膚炎の原因の特定
リンパ球反応検査食物アレルギーの原因の特定

症例報告

【犬】トイプードルの 繊維付属器過誤腫 ~良性か悪性か見分けが難しい皮膚腫瘤~

【猫】皮膚の肥満細胞腫 ~しこりに注意~

【猫】アレルギー性皮膚炎 ~痒みや湿疹~

【ウサギ】トレポネーマ症~鼻の周りや陰部周辺にかさぶたができていませんか?~

【犬】頭部にできたイボ「皮脂腺腫」