今回は頭部にできたイボを取ってほしいという主訴で来院された13歳マルチーズの症例をご紹介します。以前よりあった「イボ」が繰り返して出血しており、ワンちゃんが気にして掻いてしまっていました。皮脂腺腫を疑い、外科的に切除を行いました。
皮脂腺腫とは?
ワンちゃんによくみられる皮膚の腫瘍で、皮脂を分泌する皮脂腺がイボまたはカリフラワーのように盛り上がります。皮膚腫瘍の中で発生が多いもので、皮膚腫瘍の1/3程度を占めます。体のどこにでも発生する可能性があります。
皮脂腺腫は良性腫瘍ですが、稀に皮脂腺癌という悪性腫瘍の場合もあり、炎症や潰瘍を伴います。
中年以降のワンちゃんにできやすく、特にマルチーズ、ヨークシャーテリア、シーズー、トイプードルなどの犬種によくみられます。猫ちゃんにも発生します。
症状はほとんどありませんが、イボを引っ掻くことで皮膚の表面が炎症したり、感染を引き起こすことがあります。良性腫瘍なので転移についてはあまり心配ありませんが、局所の再発や、別の個所に新たに発生することもあります。
皮脂腺腫の治療
外科的切除をすることで治癒します。腫瘤が大きくならなければ切除せずに様子を見ることもあります。ただし、皮脂腺癌など悪性の皮膚腫瘍の可能性も否定できないことから、切除して細胞診検査や病理検査を行う場合もあります。
※細胞診検査:病変部に細い針を刺し、採取した細胞を染色し、顕微鏡で診断する検査です。細胞の採取は痛みも少なく、無麻酔でも行うことができます。ただし、しこりを構成する全ての細胞を採取しているわけではないので、確定診断は困難です。
※病理検査:しこりの一部の組織を採取して、病理診断の専門家に確定診断をしてもらいます。外注検査となるため、検査結果がでるまでに数日時間を要します。
予防できるの?
皮膚の良性腫瘍の明確な予防方法はないのが現状です。定期的に愛犬・愛猫を触って全身をチェックし、イボやしこりができていないかを確認しましょう。
- いつ
- どの部位
- どれくらいの大きさ
- 大きくなるスピード
などを注意して観察していくことが大切です。 皮膚に気になるイボやしこりを見つけたら、早めに動物病院にご相談ください。