症例case

【猫】アレルギー性皮膚炎 ~痒みや湿疹~

今回は猫ちゃんのアレルギー性皮膚炎についてご紹介します。

アレルギー性皮膚炎とは?

アレルギー性皮膚炎は、身体が何らかの刺激に対して過剰に反応し、“かゆみ”や“湿疹”として皮膚に炎症を引き起こすアレルギー反応のことです。

アレルギー性皮膚炎の原因は主に3つある!

食物性アレルギー

食べ物に含まれる成分が刺激となりアレルギー反応を引き起こします。

普段の食事が主な原因なので、季節に関係なく、一年中“かゆみ”を伴います。

<原因となる食べ物>

主に牛肉、次いで乳製品、穀類(小麦・穀物・大豆)、魚、鶏肉、卵などが挙げられます。

ドライタイプのキャットフードの原材料にはアレルギー反応の原因である「穀物」が多く含まれているため、それらのキャットフードが原因となることがあります。

<症状>

・皮膚のかゆみ(首、手足、口回り)

・下痢、嘔吐

・脱毛、薄毛

・何度も同じところを舐めたり噛んだりする

などの症状がみられます。

<治療>

除去食試験を用います。

 ∟除去食試験とは?:かゆみなどの症状が出ていた時に与えていたご飯を全て確認し、主要なたんぱく質や炭水化物を含まないご飯に約1~2か月間変更するという試験のこと。

 ∟症状が改善したら?:除去食試験を行う前に与えていたご飯を少しずつ与えて、再びアレルギー反応を引き起こす食材は何かを探していきます。口にしても大丈夫な食材、ダメな食材をしっかりと把握することが目的です。

ノミアレルギー

ノミの唾液に対してアレルギー反応を引き起こします。ノミが寄生するだけでもかゆいのですが、アレルギー反応が加わるため痒さが増します。

ノミの活動時期である春~晩秋にかけて猫ちゃんが異常にかゆがったり、腰の辺りの毛が薄くなったり、かさぶたのようなブツブツができているようなときは要注意です。

<原因>

ノミの唾液が原因となります。

吸血の際にノミの唾液が体内に入ることにより発症します。

<症状>

・背中~腰にかけて激しいかゆみ

・頻繁に掻きむしる動作がみられる

・ぽつぽつと赤い湿疹がある

・脱毛

などの症状がみられます。

<治療>

かゆみを抑える薬の投与と同時にノミの駆除を行います。

  ∟かゆみを抑える薬って?:短期的にかゆみを抑えるためにステロイド剤を処方いたします。

  ∟ノミの駆除とは?:ノミアレルギーはノミの唾液に反応し、炎症を引き起こしているので、ノミを駆除する必要があります。そのためにノミの駆除薬を処方いたします。

アトピー性皮膚炎

環境アレルギーとも言われており、花粉やカビ、ハウスダストなどの環境アレルゲンが皮膚を通じて体内に入ることで身体が過剰に反応し、アレルギー反応を引き起こします。

環境や季節によって症状に浮き沈みがあります。

完治することが非常に難しいため、根気強く向き合う必要があります。

<原因>

花粉やカビ、ハウスダストなどの環境アレルゲンに身体が過剰に反応してしまうことが原因と言われていますが、正確なメカニズムは未だに解明されていません。

<症状>

・かゆみ(頭、首、足、おなか)

・腹部に左右対称の脱毛がみられる

・掻き過ぎによる脱毛

<治療>

免疫抑制剤やステロイド剤を投与し、症状を緩和します。

  ∟免疫細胞の過剰な働きを抑えることで、炎症やかゆみを抑え、症状を軽減します。

アレルギー性皮膚炎の実際の症例

今回の猫ちゃんは皮膚の赤みや発疹で来院されました。

<来院時の写真>

下腹部の薄毛と粟粒性皮膚炎(赤いブツブツ)を認めました。まずはステロイドを試験的に投薬してみました。

<最初の来院の約10日後の写真>

粟粒性皮膚炎が軽減し発毛も認められたため、ステロイドによる治療をしばらく継続していましたが、これ以上しっかりと治らないためシクロスポリンという免疫抑制剤に切り替えました。

<免疫抑制剤に変更して約1カ月後の写真>

赤みも発疹もきれいになくなり、毛も生えてそろってきました。今現在は病変がわからないくらいにふさふさになっています。

アレルギー性皮膚炎は、何らかの刺激に対して身体や免疫が過剰に反応することで、皮膚のかゆみや湿疹、炎症等を引き起こす病気です。
基本的には一生付き合っていかないといけない病気ですが、免疫抑制剤の発売により治療の幅が広がり、痒みのコントロールがしやすくなっています。
ネコちゃんにとっても、飼主様にとっても、居心地の良い快適な生活を送るために、少しでも気になる症状が見受けられた場合は、お気軽に動物病院にご相談ください。

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