症例case

【犬】乳首のまわりにしこりがあったら要注意!「乳腺腫瘍」とは?

乳腺腫瘍とは?

乳腺腫瘍とは、乳腺の一部が腫瘍化して「しこり」ができる病気です。避妊手術をしていない雌のワンちゃんでは約 4 頭に 1 頭の割合で乳腺腫瘍が発生します。しかし、初回発情前に避妊手術をすることで、発生率は200 頭に 1 頭と低くなり、予防可能な腫瘍です。

良性腫瘍が約 50%、悪性腫瘍が約50%の割合で発生します。悪性腫瘍の半分が転移しにくく手術で根治可能なもの、残り半分が転移・再発の危険性の高いものという割合です。

乳腺腫瘍の症状

  • 乳腺(乳首の周りの皮膚の下)にしこりがある
  • しこりがゆっくり~急に大きくなる
  • しこりが熱をもって赤くなり、触ると痛がる

乳腺腫瘍の検査/診断

まずは飼い主様からの問診、視診、触診、細胞診で仮診断をします。

<悪性の乳腺腫瘍の可能性が高いしこり>

・腫瘍の大きさ:3cm以上
・成長速度:大きくなるスピードが速い
・皮膚の自潰:腫瘍表面の皮膚が破れて、潰瘍を形成

<細胞診>

しこりに細い注射針を刺して、細胞を採取し、染色して顕微鏡で観察します。細胞診で確定診断はできませんが、乳腺部にできた乳腺腫瘍以外の腫瘍を除外することがあります。細胞診だけでは良性、悪性の判断は難しい場合が多いです。

<摘出後の病理検査>

乳腺腫瘍の可能性があれば摘出手術をし、摘出した腫瘍組織を病理検査(外部の検査会社に依頼)することで、確定診断および良性、悪性の判断を行います。

<その他検査>

乳腺腫瘍の25%は悪性でかつ転移・再発する可能性が高いです。転移の可能性がある場合は、全身状態をチェックするための血液検査、他臓器に転移がないか確認するための画像診断(レントゲン検査、エコー検査)を行います。

乳腺腫瘍の治療法

基本的には、外科的に乳腺腫瘍の切除を行います。腫瘍細胞の取り残しがないように、腫瘍の回りを広い範囲で切除します。

乳腺は左右 5 つずつ、計 10 個ありますが、乳腺1つ切除して終わる場合もあります。中には両側乳腺全切除といって全ての乳腺を切除することもあります。乳腺腫瘍が 2~3 か所以上に同時に発生している場合など、将来的に残った乳腺組織から腫瘍が発生する可能性が高いためです。


また、乳腺腫瘍切除時に同時に避妊手術することが多いです。同時に避妊手術することで、新しい良性乳腺腫瘍の発生リスクを下げることができると考えられています。転移していなければ、手術で根治することが多いです。

良性腫瘍であったとしても大きくなるにつれて悪性転化することがあるため、しこりに気づいたら小さいうちに早めに切除することも大切です。

一方で、転移している場合、切除手術に加え、抗がん剤治療や放射線治療(専門の施設でのみ治療可能)を行うことがあります。ただし、乳腺腫瘍における抗がん剤治療の効果は実証されていないのが現状です。

乳腺腫瘍の症例

14歳、ミニチュアダックス

14歳、ミニチュアダックス

右最後乳房の大きなもの以外にも散在

まとめ

冒頭でもお伝えしましたが、乳腺腫瘍は早期の避妊手術で発生リスクを大幅に下げることが可能です。避妊手術では子宮蓄膿症や卵巣腫瘍と言った生殖器の病気も防ぐことができます。赤ちゃんを生む予定がない場合は、早期の避妊手術をご検討ください。

また、日々ワンちゃんとスキンシップをとりながら、体のチェックをしましょう。いつもと違うなということがあれば、お気軽に当院までご相談ください。