症例case

【犬】フィラリア症の予防と治療

フィラリア症とは

フィラリア症とは、心臓の中にそうめんのような寄生虫がわいてしまう大変怖い病気です。蚊によってうつされます。おなかの中の虫と異なり、簡単に駆虫することができません。

フィラリアのライフサイクル

フィラリアを持っている蚊に刺されることで、フィラリアの幼虫が犬の体内に侵入します。幼虫は筋肉や脂肪の周りで生活しながら2回脱皮します。感染後6カ月程度で完全な成虫になります。成虫になったフィラリアは細い血管内に侵入して心臓や肺動脈に移動し、そこを最終寄生場所にします。適切な治療をしなければ、命に関わる重篤な症状を引き起こします。

症状

  • 体重減少
  • 慢性の咳
  • 息切れ
  • 体力の低下
  • 腹部膨満
  • 尿が赤くなる など

重症の場合、心臓や肺の病気を引き起こし、死に至ることもあります。

フィラリアの予防期間

昨今の温暖化の影響により蚊のいる期間が長くなり、宇多津町周辺では5月中旬から12月中旬までの予防を推奨しています。(生活環境により異なることがありますので、詳しくはお問い合わせください。)

また、赤ちゃんに関しては、目安は生後8週齢くらいからの予防が推奨されています。ただし、成長期で体重が増加していきますので、1歳未満の子は1ヶ月ごとに体重を測って、適切な投薬量を与えてあげてください。

フィラリア予防薬

フィラリア症は毎月1回の予防薬をのませていただくか、1年に一回の注射により予防することができます。もともとはワンちゃんの病気ですが、ネコちゃんやフェレットちゃんにもうつることがわかっていますので、同様の予防をお勧めしています。

フィラリアに感染している状態で予防薬を飲んだ場合、重篤な副作用が起こるケースが報告されています。血液中に存在する大量のフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)が急激に死滅することによりワンちゃんがショック状態に陥ったり(血圧の低下や意識障害)、成虫の死骸が肺の血管へ詰まることで、ワンちゃんが亡くなってしまうこともあります。そのため、予防薬を投与する前に、フィラリアに感染していないことを確認するための血液検査が必要となります。薬の飲み忘れや、薬の吐き出しなどによって、万が一感染していた場合による事故を防ぐことが目的です。

当院ではフィラリア検査で採血した血液で、血液健康診断も実施しています。期間限定でお手頃価格にて健康診断を受診いただけます。

フィラリアに感染してしまったら

フィラリア

この写真はフィラリアに感染したワンちゃんの心臓から取り出した成虫です。この白くて細長い虫が心臓~肺動脈に寄生します。急性のフィラリア症(VCS、大静脈症候群)を起こすと命に関わる重篤な症状を引き起こします。

感染してしまったら以下の方法で治療を行います。

①フィラリア症予防薬の長期投与

フィラリア症予防薬の長期投与で、寄生している成虫が自然に減る(寿命を迎えて死んでいく)のを待ちます。

フィラリア症の予防薬には直接成虫を殺す作用はありませんが、弱い毒を継続して盛るように、成虫を弱らせて寿命を短くする作用があります。寄生している成虫が少なく、症状がない場合に用いられます。

②外科的に摘出

心臓内のフィラリアを外科手術にて直接取り除きます。

急性のフィラリア症(VCS、大静脈症候群)を発症し、緊急と思われる場合適応となりますが、すでに循環不全を起こしている状態で経静脈から心臓に器具を挿入するため、手術自体にも大きなリスクを伴います。

感染数が多く、症状が進行している場合、治療はより困難になることがあります。そのため、毎年のフィラリア検査と、適切な期間しっかりと予防することが重要です。

③成虫駆除薬の使用

現在国内では成虫駆除薬が販売されていません。当院では駆除薬の海外からの個人輸入はしておりませんので、現在この方法での治療は行っていません。