唾液腺腺腫とは?
唾液腺腺腫とは唾液腺に発生する腫瘍のことで、良性のものと悪性のものがあります。ウサギでは、耳下腺、顎下腺、舌下腺などの唾液腺に発生することがあります。
唾液腺腺腫の症状
主な症状は、以下の通りです。
- 顎の下や耳の付け根などにしこりや腫れが見られる
- よだれが増える
- 口の中にできものが見られる
- 食欲不振
- 元気がない
唾液腺腺腫の原因
正確な原因は不明ですが、遺伝的要因や慢性的な炎症などが関与していると考えられています。
唾液腺腺腫の検査/診断
ウサギの唾液腺腺腫の検査は、正確な診断と適切な治療を行うために非常に重要です。以下に、一般的な検査とその目的についてご説明します。
<触診>
腫瘤の大きさ、硬さ、形状、および周囲組織との関係を注意深く確認します。腫瘤が唾液腺のどの部分に発生しているか、リンパ節が腫れていないかなどを確認します。
<細胞診(針吸引生検)>
細い針を腫瘤に刺し、細胞を採取して顕微鏡で観察します。腫瘍の種類を推定したり、炎症性疾患との鑑別を行ったりするのに役立ちます。ただし、唾液腺腺腫は細胞診だけでは確定診断が難しい場合があります。
<生検(組織生検)>
腫瘤の一部または全部を外科的に切除し、病理組織検査を行います。腫瘍の種類、悪性度、および進行度を確定診断するために最も重要な検査です。
<画像検査>
- レントゲン検査: 胸部や腹部のレントゲン写真を撮影し、肺やリンパ節への転移がないかを確認します。
- 超音波検査: 腫瘍の大きさや内部構造を詳しく調べます。
- CT検査: 腫瘍の広がりや周囲組織への浸潤、リンパ節転移などをより詳細に評価します。
<血液検査>
全身状態を把握するために行われます。貧血の有無や、肝臓、腎臓などの臓器機能を確認します。
検査結果を総合的に判断し、最適な治療法を提案します。
唾液腺腺腫の治療法
ウサギの唾液腺腺腫の治療は、腫瘍の種類、大きさ、悪性度、進行度、そしてウサギの全身状態などを考慮して決定されます。以下に、一般的な治療法とその特徴を説明します。
<外科手術>
腫瘍を完全に切除することが最も効果的な治療法です。唾液腺ごと腫瘍を摘出する場合もあります。腫瘍を完全に切除できれば、根治の可能性も高まります。
<化学療法(抗がん剤)>
悪性腫瘍の場合に抗がん剤を使用することがありますが、どの抗がん剤をどの用量で用いるのが効果的か、など根本的なことであっても不明な点が多いのが現状です。化学療法には食欲不振、嘔吐、下痢、脱毛などの副作用が現れることがあります。ウサギはデリケートなため、注意が必要です。
<緩和治療>
腫瘍が進行し、根治が難しい場合に、症状を緩和するための治療が行われます。痛みがある場合には、鎮痛剤などを用いて疼痛管理を行います。
治療には副作用のリスクが伴うことがあります。特にウサギは、麻酔や薬剤に敏感な場合があります。治療を受けるかどうか、またどのような治療法を選択するかは、飼い主様と相談しながら決定していきます。
唾液腺腺腫の症例
9歳、ウサギ
5カ月くらい前から皮下に柔らかい腫瘤を触知していました。徐々に大きくなり、また腫瘤の数が増えてきたため、細胞診(針吸引生検)にて低粘性の液状物を採取しました。液状物は針を刺す位置により赤橙色、琥珀色、乳白色と様々な色を呈しました。



まとめ
唾液腺腺腫の予後は、腫瘍の種類や大きさ、進行度、治療法などによって異なります。一般的には、良性腫瘍の場合は予後良好ですが、悪性腫瘍の場合は予後不良となることがあります。そのため、早期発見・早期治療が大切です。しこりや腫れなどの症状が見られたら、自己判断せずに、すぐに動物病院を受診しましょう。