症例case

【うさぎ】女の子に多い「子宮疾患」

子宮疾患とは

今回はうさぎさんに多い、子宮疾患についてご紹介します。子宮疾患は未避妊のメスのうさぎに非常に多くみられます。子宮疾患と言っても様々で、子宮腺癌、子宮内膜炎、子宮水腫、子宮筋腫、子宮蓄膿症などがあります。

一般的にうさぎは犬や猫と比べて健康診断で精密検査をすることが少ないため、見落とされがちです。子宮疾患になると、重篤な状態を引き起こすことも多いため、少しでも異常があれば早めに動物病院にご相談いただくことをお勧めします。

子宮疾患の症状

  • 子宮からの出血による血尿
  • 乳腺・乳頭の腫脹
  • 腹部の膨張
  • 食欲不振
  • 体重減少  など

血尿といっても状態は様々です。尿全体が赤くなったり、尿の中に血の塊がみられたり、鮮血が陰部から出てくるなど。また、血尿と普通の尿を繰り返すこともしばしばで、治ったと勘違いされてしまうこともあるかもしれません。

しかし、出血による血尿は比較的緊急性が高く、貧血を起こし、命を落としてしまう可能性もあります。そのため、たかが血尿と様子見るのではなく、ある程度緊急性を持って治療に臨む必要があります。

その他、子宮に水がたまる子宮水腫、子宮に膿がたまる子宮蓄膿症の場合には血尿がみられず、お腹が脹ってくるなどの症状がみられることもありますので、こちらもご注意ください。

子宮疾患の原因

うさぎは交尾した時の刺激によって排卵が誘発される交尾排卵動物であるため、一定した性周期がなく、年中発情状態です。

妊娠している時のうさぎはプロゲステロンというホルモンが優位になり、妊娠していないうさぎはエストロゲンという女性ホルモンが活発になっています。ペットとしてのメスのうさぎは、妊娠する機会がない子がほとんどで、一年中エストロゲンが優位な状態となっています。

ホルモンが不均衡な状態が続くため、うさぎは子宮疾患を引き起こしやすいのではないかと考えられています。

子宮疾患の検査/診断

子宮疾患による血尿なのか、膀胱炎や結石による血尿なのかを鑑別する必要があります。症状や状態、以下のような各種検査を行うことで総合的に診断していきます。

①画像診断(レントゲン検査やエコー検査)
②尿検査
③血液検査

子宮疾患の治療法

①外科手術

第一選択の治療は、手術で子宮と卵巣の全摘出を行います。一般的にうさぎの全身麻酔は、犬や猫よりもリスクが高いと言われています。そのため、慎重に麻酔管理を行う必要があります。基本的には避妊手術と同じ手術となりますが、うさぎ自身が疾患によって衰弱していることなどから、手術の難易度は上がります。

②内科治療

高齢などの理由で手術が出来ない場合には、抗生物質や消炎鎮痛剤、止血剤などで内科療法を行いますが、あまり効果は期待できません。

ここからは実際の手術写真があるため、ご了承いただける方のみお進みください

子宮疾患(子宮内膜症&子宮水腫)の症例

6歳のウサギさん。おしっこに鮮血が混じるという主訴で来院されました。超音波検査にて子宮病変を疑いました。

左側の子宮は水腫を、右側の子宮は内膜炎を起こしていました。

陰部からの出血
左側の子宮は水腫(子宮に漿(しょう)液が溜まっています)となっており、
右側の子宮は内膜症を起こしています。
摘出した子宮。写真左上に写っている注射器の中の黄色い液体は手術中膀胱から直接採取した尿で、血尿ではないことがわかります。(陰部から出ている出血は子宮からということです。)
子宮内膜症(子宮内に出血・血餅を確認)

まとめ

避妊手術で子宮を摘出していれば、子宮疾患を防ぐことが可能です。
繁殖の予定がない、女の子のうさぎを飼われている飼い主様は、避妊手術を検討してみませんか?

子宮の病変は早ければ2歳前後から起こることがあります。そのため、手術は1歳までに行うことをお勧めしています。ただし、1歳を過ぎたから手術ができないわけではありませんので、興味のある方はご相談ください。

また、うさぎさんが肥満している場合には麻酔や手術のリスクが高くなるため、何かあった時のために適正な体重維持にも気を配りましょう。