「最近、うちの子、体をやたらと舐めている気がする…」
「毛が薄くなっている部分があるけど、大丈夫かな?」
猫の飼い主さんなら、一度はこんな不安を抱いたことがあるかもしれません。もしかしたら、その症状は「アレルギー性皮膚炎」が原因かもしれません。
今回は、6歳の雑種猫で、過剰なグルーミング(毛づくろい)と脱毛が見られ、プレドニゾロンというお薬で症状が改善した症例をもとに、猫のアレルギー性皮膚炎について詳しく解説します。病気の概要から、症状、原因、具体的な検査や治療、そしてご自宅でできる予防策まで。飼い主さんが知っておくべき情報を網羅しました。この記事を通じて、愛猫の健康を守るヒントを見つけていただければ幸いです。
猫のアレルギー性皮膚炎の概要:かゆみの原因は体の外から?中から?
猫のアレルギー性皮膚炎は、外部から侵入するアレルゲン(アレルギーの原因となる物質)に対して、免疫システムが過剰に反応することで、皮膚に強いかゆみや炎症が起こる病気です。人間が花粉症などに悩まされるのと同様に、猫も様々なアレルゲンに反応します。
アレルギーは体質的なもので、一度発症すると完治は難しいとされています。しかし、適切な治療と環境管理を行うことで、かゆみをコントロールし、猫の生活の質(QOL)を高く保つことが可能です。今回の症例のように、適切な治療を開始することで、症状が劇的に改善することもあります。
猫のアレルギー性皮膚炎の症状:執拗なグルーミングと脱毛がサイン
アレルギー性皮膚炎の主な症状は、強いかゆみです。このかゆみから解放されたい猫は、体を頻繁に舐めたり、掻いたりするようになります。これを「過剰なグルーミング」と呼びます。今回の症例の猫も、3週間ほど前から舐める時間が明らかに増えました。その結果、部分的に毛が薄くなってしまった状態でした。

アレルギー性皮膚炎で具体的に見られる症状は、以下の通りです。
- 過剰なグルーミング:特定の部位を執拗に舐め続ける。
- 部分的な脱毛:お腹、内股、脇、しっぽの付け根、背中など、舐めやすい場所の毛が抜けてしまう。
- 皮膚の赤みや湿疹:炎症が起こり、皮膚が赤くなったり、小さなブツブツができたりする。
- 粟粒性皮膚炎(ぞくりゅうせいひふえん):皮膚に粟粒のような小さなカサブタが多数できる。
- 頭頚部皮膚炎:目の上や頬、首のあたりを掻く。
一見、皮膚病とは気づきにくい「過剰なグルーミング」が、アレルギーの初期サインであることが多いです。もし愛猫のグルーミングの頻度が増えたと感じたら、よく皮膚を観察してみましょう。
猫のアレルギー性皮膚炎の原因:アレルゲンを特定するのは困難なことも
猫のアレルギー性皮膚炎には、主に3つのタイプが考えられています。複数のタイプが組み合わさって症状を引き起こしているケースも珍しくありません。
1. ノミアレルギー性皮膚炎
ノミの唾液に含まれる成分に対するアレルギー反応です。ノミに刺されることで強いかゆみが生じます。また、背中やお尻の周りに粟粒性皮膚炎が見られることが多いです。1匹ノミがいるだけでも、強いアレルギー反応を引き起こすことがあります。
2. 食物アレルギー
特定のタンパク質(牛肉、鶏肉、魚、乳製品、穀物など)に対するアレルギー反応です。生まれてからずっと食べてきたフード、それにより、ある日突然アレルギーを発症することがあります。
3. 環境アレルギー(アトピー性皮膚炎)
ハウスダスト、花粉、カビ、ダニなど。環境中に存在する物質に対するアレルギー反応です。これらは呼吸器を通して体内に取り込まれることでアレルギー反応を引き起こします。
猫のアレルギー性皮膚炎の検査・診断:時間をかけて原因を探る
アレルギー性皮膚炎の診断は、かゆみの原因となる他の病気(真菌感染症、細菌感染症、寄生虫など)を一つずつ除外していく「除外診断」が基本となります。
- 問診:いつから、どんな症状が出ているか、食事内容、ノミ予防の有無、生活環境などを詳しく聞き取ります。
- 皮膚検査:皮膚の表面を拭き取って顕微鏡で観察し、細菌や真菌、寄生虫がいないか確認します。
- ノミの検査:猫の被毛を細かくチェックしたり、ノミの糞(黒い粒)がないか確認したりします。
- アレルギー検査:血液検査や皮膚テストで、どのようなアレルゲンに反応するかを調べることができます。しかし、検査結果が必ずしも症状と一致するわけではないため、あくまで補助的な診断ツールとして使われます。
- 除去食試験:食物アレルギーが疑われる場合に行う最も確実な診断方法です。これまで食べたことのないタンパク質や加水分解されたタンパク質を一定期間(通常8〜12週間)与え続け、症状の変化を確認します。症状が改善すれば、食物アレルギーである可能性が高いと判断されます。
今回の症例のように、かゆみを抑える薬(プレドニゾロンなど)を試してみて、症状が改善するかどうかを確認することも、診断の一助となります。
猫のアレルギー性皮膚炎の治療:薬と環境管理でかゆみをコントロール
アレルギー性皮膚炎の治療は、「かゆみを抑える」ことと、「アレルゲンへの暴露を減らす」ことの2つの柱から成り立ちます。
1. 投薬治療
- ステロイド剤:今回の症例で使われたプレドニゾロンが代表的です。強力な抗炎症作用があり、短期間でかゆみを抑える効果が期待できます。しかし、長期使用には副作用のリスクがあります。そのため、症状が安定したら少しずつ量を減らしていきます。
- 免疫抑制剤(シクロスポリン):アレルギー反応を引き起こす免疫細胞の働きを抑える薬です。
- 抗ヒスタミン剤:かゆみの原因となるヒスタミンの働きを抑える薬です。
2. アレルゲン対策
- ノミ・ダニ予防:ノミアレルギーの場合、定期的なノミ予防薬の投与が最も重要です。
- 食事療法:食物アレルギーの場合、アレルゲンを含まない療法食に切り替えます。
- 環境改善:環境アレルギーの場合、こまめな掃除、空気清浄機の活用、アレルゲン対策のシャンプーなどが有効です。
今回の症例では、プレドニゾロンの投与により、かゆみが治まり、舐める行動が明らかに減少しました。これは、アレルギー性皮膚炎が原因でかゆみが生じていたことを強く示唆しています。
猫のアレルギー性皮膚炎の予防:まずはノミ対策と清潔な環境づくりから
アレルギーは体質的なものなので、完全に予防することは難しいです。しかし、発症のリスクを減らしたり、症状を悪化させないようにしたりすることは可能です。
- ノミ・ダニの予防:最も簡単な予防策です。年間を通して定期的に予防薬を投与することで、ノミアレルギー性皮膚炎はほぼ予防できます。
- 清潔な生活環境の維持:ハウスダスト、カビ、花粉などを減らすために、こまめな掃除や換気を心がけましょう。空気清浄機も有効です。
- 食事管理:食物アレルギーを疑う場合は、獣医師の指示に従って適切な食事を選びましょう。安易にフードを切り替えるのではなく、専門家の意見を聞くことが大切です。
- 定期的な皮膚ケア:ブラッシングやシャンプーで皮膚を清潔に保つことも大切です。
まとめ:諦めないで、獣医と二人三脚で
猫のアレルギー性皮膚炎は、原因の特定が難しく、治療に時間がかかることもあります。しかし、適切な診断と治療、そしてご自宅での丁寧なケアによって、症状は必ず改善します。今回の症例の猫も、プレドニゾロンというお薬でかゆみから解放され、過剰なグルーミングが止まりました。
「うちの子、何か様子が変だな…」と感じたら、まずは動物病院を受診しましょう。獣医師と協力して、愛猫に合った治療法と生活習慣を見つけてあげてください。