症例case

【猫】皮膚の病気「猫の好酸球性肉芽腫症候群」とは?

好酸球性肉芽腫症候群

猫の上くちびる、上あご・舌の粘膜に潰瘍、皮膚に脱毛を伴う赤いただれができる病気です。好酸球とは、白血球の一種で、アレルギーや寄生虫感染に反応して増加する細胞です。好酸球性肉芽腫症候群では、病変部分から、その好酸球が多数見られるのが特徴です。

好酸球性肉芽腫症候群は、


・好酸球性潰瘍(かいよう)
・好酸球性プラーク(局面)
・好酸球性肉芽腫(線状肉芽腫)


の3つのタイプに分けられます。

好酸球性肉芽腫症候群の症状

好酸球性肉芽腫症候群のタイプによって、現れる症状が変わってきます。

●好酸球性潰瘍
上くちびるにできることが多く、くちびるが欠けたように見えます。見た目に対し、猫自身があまり気にしないことが多いので、無痛性潰瘍と言われることもありますが、実際に痛みがないかどうかはわかりません。

●好酸球性プラーク
腹部や首にできることが多いです。脱毛し、赤くなった皮膚が、平ら~やや膨らんで、少し汁がにじんでしっとりと見えることが多いです。激しい痒みを伴うことが多く、しきりにその部分を舐めたり、かいたりします。

●好酸球性肉芽腫
太ももの後ろ側、舌にできることが多いです。線状の皮膚の盛り上がりが認められます。

これらは全く別の皮膚症状に見えますが、いずれも皮膚組織の中に多数の好酸球が見られるという共通点があります。

好酸球性肉芽腫症候群が起こる原因

好酸球性肉芽腫症候群ではアレルギー、寄生虫や細菌感染が原因になるともいわれていますが、はっきりとした原因は分かっていません。また、ストレスも発症のひとつの引き金になっている可能性があるといわれています。

好酸球性肉芽腫症候群の検査/診断

以下の検査を必要に応じて組み合わせて、疾患を特定していきます。

  • 視診:病変の状態、症状から該当する皮膚疾患を検討していきます。
  • 皮膚検査:病変部にスライドガラスを押しつけ、顕微鏡で細胞の種類や細菌感染の有無などを調べます。
  • 生検/病理組織検査:病変部の組織を採取し、外注検査を行います。

リンパ腫や扁平上皮癌といった皮膚腫瘍、その他の疾患などの可能性を除外するために、必要に応じて血液検査などの他の検査も行うことがあります。

好酸球性肉芽腫症候群の治療法

以下の治療を必要に応じて組み合わせていきます。

①ステロイド剤
炎症や痒みを抑える目的で使用します。

②抗生物質
治療の初期には感染を伴っていることが多いため、同時に使用することが多いです。

③免疫抑制剤
アレルギー(免疫の過剰反応)が関連している可能性があるため、ステロイド剤だけでの症状のコントロールができない場合、免疫を抑える薬を投与することがあります。

④ノミの駆虫
ノミアレルギー性皮膚炎が根底の原因として疑われる場合に、実際にノミが見つかっていない場合でも、ノミ駆虫薬を用いることがあります。

⑤食事の変更
食物アレルギーが根底の原因として疑われる場合は、食物アレルギー用の療法食へのフード変更をおすすめする場合があります。

症例1,2<好酸球性潰瘍>

症例1)3歳の猫ちゃん。左上くちびるに潰瘍ができています。
症例2)1歳の猫ちゃん。上くちびるに左右とも潰瘍ができています。

症例3<好酸球性プラーク、肉芽腫>

9歳の猫ちゃん。

1年くらい、なめたり掻いたりして治らないという主訴で来院されました。

4枚目の写真は腹部の病変部の細胞診の画像です。好酸球が多数認めらました。

 病変部から採取された多数の好酸球(赤い粒を含んでいる細胞)

症例3の猫ちゃんの治療経過

赤みがなくなり、かさぶたができてきます。
毛も少しずつ生えてきます。
お腹はかさぶたもなくなり、毛も随分と生えてきました。

まとめ

好酸球性肉芽腫症候群は明確な予防方法はありません。少しでも皮膚に異常があれば、早めに動物病院を受診しましょう。